高齢者のアルコール依存症

社会の高齢化に伴い高齢者のアルコール依存症が年々増加傾向にあります。その背景には定年退職後の生活の変化や役割の喪失、あるいは配偶者や親しい友人との別れなど、老年期特有のライフイベントの影響があるようです。高齢になると若い頃と比べ体に占める水分の割合が低下するなどの理由から、少量の飲酒でも酔いやすくなり、アルコールによる心身への影響がより強く現れます。肝障害などの臓器障害はもちろんですが、高齢者の場合は足腰が弱り転倒することが増えたり、失禁や物忘れなどの症状が特徴的です。また意外と多いのがご家族への暴言です。

　当院では高齢者のアルコール依存症の方にも積極的に治療を行なっています。「もう歳だから好きに飲ませてあげたら」という意見もありますが、実は高齢者の方は若い方と比べて治療後の断酒率が高く、断酒することで落ち着いた家庭生活を取り戻すことができます。また断酒後に物忘れが改善する場合もあり、入院することで認知症の状態を正しく見極めることもできます。ご高齢の方々の多くは長年一家の大黒柱としてご家族を支えてこられました。本来であればご家族と一緒に穏やかな余生を送ってほしいと誰もが願っているはずです。ご本人が受診を拒まれることもありますが、ご家族からの相談もお受けしておりますので、ぜひ一度当院にご相談ください。

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